航空豆知識#208 渡り鳥の編隊飛行
アルファーアビエィションの飛行機とヘリコプターの飛行教官、整備士がお届けする大好評でためになる航空豆知識。今回は当校の飛行機操縦教官がお届けします。
渡り鳥の編隊飛行
以前の豆知識の投稿で「ウイングレットについて」を紹介しました。内容については、ウイングレットは飛行中の翼端に生ずる翼端渦(WINGTIP VORTEX )を抑制する効果が得られると紹介しました。
詳しくは➡︎#206 ウイングレットとは
翼端に発生する空気の流れ(翼端渦発生)とウイングレットの役割について図式化して説明すると図1のようになります。
その中でこの翼端渦は誘導抗力を伴うため、航空機にとっては厄介なものであると説明致しました。ところが、渡り鳥は翼端渦を有益に利用していることを紹介します。 図2で示す通り、渡り鳥についても、航空機の翼と同様に、つばさ下面の気圧の高いほうから、つばさ上面の気圧の低いほうへ翼端で空気の流れ込みが起こり航空機と同様に翼端渦が発生します。
渡り鳥は餌の確保や繁殖のために数千キロから1万キロ以上移動するのですが、そのための飛行はかなり過酷なので、若い鳥は途中で力尽きて死ぬ場合もあるそうです。そこで渡り鳥は、前方を飛ぶ鳥の斜め後方を飛行して、前方の鳥が発生させる翼端渦の上昇流に乗りながら飛行すると楽に飛行できるので、必然的に図3のようにV字の編隊飛行をすることになり、その結果、省エネ飛行を継続することで、なるべく仲間を失うことなく移動してるそうです。
そうすると、V字の編隊飛行の先頭を飛行する鳥(航空機でいえば編隊長)は翼端渦を発生させながら、正確に目的地に行くための優れた航法能力が求められるうえに、外敵接近の回避判断も伴い、かなり体力を消耗するのですが、それを一羽だけに求めず、平等に交代しながら編隊長の仕事を推進してるみたいです。以上のことから、渡り鳥って賢いし団結力があり偉いなと思いつつ、V字編隊飛行をする渡り鳥を見たら、尊敬の眼差しで仰ぎ見て、「無事に目的地まで飛行できますように」と祈るのでした。