航空豆知識#162 「Remove Before Flight」
飛行機の主翼下に赤いリボンの正体は??
アルファーアビエィションの飛行機とヘリコプターの飛行教官、整備士がお届けする大好評の航空豆知識。 今回は、飛行機の操縦教官がためになる情報をお届けします。
飛行機のオシャレではありません 主翼の下に赤いリボンのような物が付いています。よく見ると何かを覆っているカバーのようです。英文字も見えます。
REMOVE BEFORE FLIGHT
<飛行の前に外せ>
航空業界関係者ならばお馴染みの物ですが、同じ乗り物でも自動車の運転前に車体から外 すものなんてありませんよね。
この赤いカバーの正体は、飛行機の対気速度を測る「ピトー管」を虫などの異物混入から守 るものなのです。
飛行機は空気中を運動するため、自動車のように車輪の回転から速度を測ることができません。代わりに移動することによって受ける風圧(専門用語では「全圧」)とその場所の大 気圧(同「静圧」)の圧力差(同「動圧」)をこのピトー管によって検出し、操縦席の速度計に表示するのです。
ピトーとはこの装置を発明したフランス人の名前で、セーヌ川の流量を調査していた1732年の発明だそうです。後にベルヌーイの定理により理論的に証明されたピトー管は今でも 飛行機にとって重要なセンサーの一つなのです。地上駐機中にカバーをしないと、蜂などが細い管の中に巣を作り始め、これらが飛行中ピト ー管の穴の中の空気の流れを阻害することによって速度計の表示がおかしくなってしまうのです。
では、飛行前にカバーを外すことを忘れてしまったら?
同じように速度計が狂います。
通常は離陸加速中に気付いて離陸を中止しますが、時には離陸してしまってから気付くようなことも・・・過去にはこれが原因で墜落してしまった旅客機もあるほどです。
そういう事故を未然に防ぐ意味合いも含めて、赤い色、なおかつ覆い部分より数倍も大きなひらひらとするリボン状の布で目立つようにしているのです。