航空豆知識#184 「防除氷装置」
アルファーアビエィションの飛行機とヘリコプターの飛行教官、整備士がお届けする大好評でためになる航空豆知識。今回はエアラインパイロットでもある当校の飛行機操縦教官がお届けします。
防除氷装置について
冬場における飛行は低高度であっても、Icing Conditionに遭遇することは良くあります。
そのためVFR、IFRにおいてもIcing Conditionが予想される場合は防除氷装置が装備されている飛行機でないと飛行できません。
それでは、防除氷装置とはいったいどのようなものなのでしょうか?
一般的には翼やプロペラ、そしてジェットエンジンの空気取り入れ口など飛行中に氷が付きやすく、また氷が付着した際などに飛行性に影響が出るような場所に氷などが付着しないようにするための装置を言います。
今回は翼の各種防除氷装置について説明をします。
① Bleed Air Heated Surfaces
これは、ジェット旅客機などで採用されている方法で、エンジンからの高温高圧の空気で翼の前縁部分を温めて氷を付着させないようにするシステムです。
② Pneumatic De-Ice Boots
こちらは、ターボプロップ式の旅客機や一部のレシプロ機でも採用されています。
翼の前縁部分に装備されているブーツと呼ばれるゴム製の膨らむ部分に空気を送り込み張り付いた氷を割ってしまうシステムです。
以前は着氷してから使用するようになっていましたが、現在は着氷が予想されたら使用を始めてもよくなっているようです。
③ Weeping Wings
これは、アルファーアビエィションで使用しているDA42にも採用されているシステムです。
防除氷液として使われているグリコールを含む液体を翼の前縁部分にある微細穴を通して流出させて着氷を防ぎ、かつ除氷も行えます。
④ Electro-Mechanical
Electro-Mechanical Expulsion Deicing, or EMEDSと呼ばれる、最新の技術です。
翼の前縁部分に、センサーを取り付け着氷を感知するとコイルが励磁して翼の前縁部分を振動させて着氷を防ぐシステムです。
まだ、一部の小型ビジネスジェット機に装備されているだけのようです。
上記の①や②のシステムは古くからあるシステムですが、③は比較的新しく、④は最新のシステムです。
飛行機の安全性を高めるために装備品も技術革新で大きく進歩しています。