航空豆知識#179 「横風着陸」
アルファーアビエィションの飛行機とヘリコプターの飛行教官、整備士がお届けする大好評でためになる航空豆知識。
今回はエアラインパイロットでもある当校の飛行機操縦教官がお届けします。
「横風着陸」について
パイロットにとって横風着陸は最も習熟が必要な技術となっています。
なぜなら、着陸直前の最も緊張する場面において、いつものように翼を水平にしておくと横風に伴い飛行機が風下に流されてしまうからです。
これを防いで流されないようにするために2つの方法があります。
通常の飛行中は、風上方向に機首を向けて飛行するクラブ法で飛行します。
クラブ法とはカニが横を向いて歩いていることから名付けられました。
しかし、このまま着陸してしまうとタイヤが進行方向と違う向きに接地してしまうのでタイヤや脚構造へ悪影響を及ぼしてしまいます。
そのため、タイヤの向きが進行方向と平行になるように下図のように風上にバンクを取り、かつ風上側に旋回を止めるように風下側にラダーを取る、ウイングロー法で着陸することが推奨されています。
しかし、ウイングローは風の強弱で必要なバンク角やラダー量が変化することや、少しスリップさせながらの飛行のために必要なパワーがいつもより多めになること等、通常よりも難しい技術が要求されます。
そのため、ただでさえ着陸は訓練生にとって難しいのに、横風着陸はとても難しく難易度が高いと思われて苦手意識を持ってしまうことがあります。
しかし、この技術をしっかりと習得しないと安全な運航を行えません。
福島空港の滑走路は長さ2500m、幅60mもあり、横風着陸等の各種着陸技術を習得するにはとても良い環境となっています。
横風や気流の悪い環境でも、最後までしっかりと飛行機をコントロールする技術を福島空港の大きな滑走路で優秀な教官からしっかり学びましょう。
大型旅客機などの横風着陸はクラブ法で進入しフレアの際に風下にラダーを当てて機軸を戻します。
ただし横風が強い場合は5度以内のクラブを残して、少し風上側にウイングローを取ります。
このバンクも深く取りすぎるとエンジンや翼端をこすってしまうのでバンク角も5度程度以内にしておかないとなりません。
初期訓練でしっかりとした技術を習得しておけば、大型機への移行も容易に行えます。