航空豆知識#178 「操縦者の見張り義務」
アルファーアビエィションの飛行機とヘリコプターの飛行教官、整備士がお届けする大好評の航空豆知識。 今回は当校のヘリコプター操縦教官がためになる情報をお届けします。
航空機を安全に運航するために見張りの義務は非常に重要です。
「操縦者の見張り義務」は、1975年(昭和50年)の航空法改正で新たに加えられました。
その条文は、次の通りです。
(操縦者の見張り義務)
第71条の2
航空機の操縦を行っている者(航空機の操縦の練習をし又は計器飛行等の練習をするためその操縦を行っている場合で、その練習を監督する者が同乗しているときは、その者)は、航空機の航行中は、第96条第1項の規定による国土交通大臣の指示に従っている航行であるとないとにかかわらず、当該航空機外の物件を視認できない気象状態の下にある場合を除き、他の航空機その他の物件と衝突しないように見張りをしなければならない。
解 説
1「航行中」とは、航空機の地上移動中と飛行中の事です。
2「第96条第1項」とは、 (航空交通の指示) 第96条 航空機は、航空交通管制区又は航空交通管制圏においては、国土交通大臣が安全かつ円滑な航空交通の確保を考慮して、離陸若しくは着陸の順序、時機若しくは方法又は飛行の方法について与える指示に従って航行しなければならない。
3「見張り」とは、航空機の航航中、他の航空機や物件と衝突のおそれがないか周りをよく観察することです。
4 第93条では、地上の物件等を利用して位置や針路を知ることができるときは、計器飛行方式による飛行を行っている航空機でも計器飛行を禁止しています。
「見張り」とは目で見る見張りだけではありません。他機に対する交通情報であっても注意して聞いていると自機の飛行方向や高度と同じだったりします。方位情報からその方向へ目を向けると自機へ交通情報の提供を受ける前から発見できることもあります。その時は余裕で「Traffic Insight」と応答できます。このことを「耳目による見張り」と言います。
空中衝突防止のため「見張りの義務」について法律で細かく定められていますが、惨劇を繰り返さないためにも「耳目による見張り」を励行しましょう。 ピラーの陰に潜む他機にも十分注意してください。