航空豆知識#160 「緊急用フロートについて」
アルファーアビエィションでは、ヘリコプター・飛行機の操縦教官や整備士による航空機に関する貴重な豆知識を紹介しています。
前回は飛行機操縦教官による「バードストライク」について紹介しました。今回は、ヘリコプター操縦教官による「緊急用フロート」についての豆知識を紹介します。
「緊急用フロート」とは、ヘリコプターが緊急着水する際に使用するフロートですが、洋上を飛行する際、緊急フロートがあれば大丈夫とういう考えでは思わぬ事故に繋がりかねません。
それでは、どうすればよいのでしょうか?
操縦士の立場からお話すると、
・緊急フロートの性能及び操作手順を確実に理解する。
・日頃から緊急時の処置手順を訓練する。
・一般人が搭乗する場合は、脱出要領をしっかりブリーフィングして飛行を開始する。
等が考えられます。
昔、南極をOH-6Dで飛行した際に当時のOH―6Dに緊急用フロートが付いていました。
なぜ付いていたのでしょうか?
南極では、氷海を飛行することがあります。氷海には氷山もありますが、氷山は思いのほか高く不時着するのは条件的に難しい場合もあります。つまり、安全を考えると氷海は洋上を飛行するのと同じと考えることができます。
航空機に搭載する「救急用具」については、航空法62条に「救急用具」として、国土交通省令で定める航空機には、落下傘、救命胴衣、非常信号灯その他の国土交通省令で定める救急用具を装備しなければ、これを航空の用に供してはならないと決められています。緊急用フロートは、この救急用具に含まれています。
また、緊急用フロートは、簡単に言うと単発の回転翼航空機の場合は、オートローテーションにより陸岸に緊急着陸することが可能な地点を越えて水上を飛行する場合(細部事項は省略)緊急用フロートを装備しなければいけません。つまり、運航する条件(旅客を運送する航空運送事業の用に供するもの等)によっては、緊急用フロートが必要な場合があるということになります。
[R66の緊急用フロート]
昔乗っていた(UH-60J,SH-60シリーズ等)には、基本的に緊急用フロートが装備されています。機体重量の重いヘリコプターは気密性がない場合は、緊急用フロートを作動させても確実に水没します。しかし、フロートを作動できれば、脱出時間を確保することができます。洋上を飛行する際は、命を守るための最優先は、機内から確実に脱出することです。
今回は、脱出するために必要な救急用具「緊急用フロート」についてお話しました。その他の豆知識をご覧になりたい方は、航空豆知識のページよりご覧になれます。
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