航空豆知識#194 「脚の出し忘れに注意」| アルファーアビエィション

航空豆知識#194 「脚の出し忘れに注意」

アルファーアビエィションの飛行機とヘリコプターの飛行教官、整備士がお届けする大好評でためになる航空豆知識。今回は当校の飛行機操縦教官がお届けします。

脚の出し忘れに注意

アルファーアビエィションでは、単発機のC172、DA40と双発機のDA42を訓練に使用しています。このうち、単発機は2機種とも車輪が常時出ている「固定脚」の航空機で、車輪を機体内に引き込むことができません。一方、双発機のDA42は離着陸の際には車輪を出しますが、飛行中は車輪を機体内に格納する「引き込み脚」の航空機です。

低速の航空機はコストや部品点数増加による重量増などの面から固定脚が主流ですが、旅客機等の高速の航空機は引き込み脚が一般的です。抵抗は速度の二乗に比例するため、飛行速度が高速になればなるほど脚の抵抗が問題になるからです。 引き込み脚の航空機にとって最大の脅威は、着陸時の脚の出し忘れです。特にパイロットが1名で操縦する小型航空機では、脚の出し忘れによる事故やインシデントが過去に数多くみられます。

このため、脚の出し忘れを防ぐために、航空機には様々な安全装備が付けられています。 まずは車輪の出し入れをする際のレバーですが、レバーの先端部分が車輪に似た形状になっています。これにより夜間飛行の際などでも指先の感覚で車輪レバーとよくわかります。またレバーが下の位置にあれば車輪は下げ(出された)の状態、レバーが上の位置にあれば車輪は上げ(格納された)状態となるように設定されています。

レバーの位置だけでは車輪が正常に上げ、もしくは下げの位置で固定されているかははっきりしません。コクピットから直接車輪を見ることはできませんし、例え目視できたとしても、上げや下げの位置で完全にロックされているかどうかは判らないからです。このため車輪の位置を示す表示器がコクピットに装備されています。(目視もできるように脚ミラーを装備した飛行機もあります)

DA42の脚下げ指示器は、機体前方の車輪(ノーズ・ギア)一つと機体中央部の車輪(メイン・ギア)2つの合計3つのランプです。パイロットが脚下げを行って下げ位置で完全に固定されると3つの緑のライトが点灯します。パイロットはこれを確認し「Gears three green」と呼称します。万が一、一つでも緑のライトが点いていない場合は「脚下げ指示不安全」の緊急操作に移ります。

[脚レバーとグリーンライト]

また、パイロットが脚を下げる行為自体を忘れてしまった際の安全装置も付けられています。小型機では着陸の際にはエンジン出力を絞って行いますが、車輪が出ていない(着陸位置で完全にロックされていない)状態で、パワーを一定以上絞るとコクピットに警報音が鳴るようになっています。 さらに、着陸の際には通常、高揚力装置(フラップ)を使用しますが、車輪が出ていない(着陸位置で完全にロックされていない)状態で、フラップを進入状態以上に下げると、パワーレバーの位置に関係なく、警報音が鳴るようになっています。

[脚警報灯(赤いライト)]

地上でも抜かりはありません。誰かが間違って地上で車輪レバーを上げてしまっても車輪が格納されないように、航空機が地上にあることを検知するセンサーが主車輪についていて誤操作を防止しています。

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