航空豆知識#191 「DA42のVx、Vyは同じ?」
アルファーアビエィションの飛行機とヘリコプターの飛行教官、整備士がお届けする大好評でためになる航空豆知識。今回は当校の飛行機操縦教官がお届けします。
DA42のVx、Vyは同じ?
Vに関する用語については、その他にVA、VB、VC、VD、VE等がありますが、それぞれに意味を持っていますので確認をお願いします。
さて、今回性能表に表記される、Vx(最良上昇角速度)、Vy(最良上昇率速度)についての算出要領を紹介します。特にDA42では同速度となっています。 この速度は、飛行機の初期の段階での飛行試験で計測するものです。準備するものは、優秀なTEST PILOTと試験機そしてデータを管理するコーディネーターとなります。 試験要領は次のとおりで、各速度に対する上昇率を測定します。
上図のようにコーディネーターは、計測CASEをパイロットに伝え、計測を開始することになりますが、今回の例では2000Ftの70Ktにおける上昇率から測定を開始することになります。 パイロットは、計測手前の1000FtからMCPで70Ktを正確に維持して上昇を開始し1500Ftから2500Ftまで必死に諸元保持を行い上昇します。 コーディネーターはパイロットが通報する1500Ft通過時から2500Ftまでの時間を計測することで、上昇率を算出します。
このように以下CASEを変更(高度、速度)し、計測を継続しますが、速度の保持が不安定であったり、気流の影響により計測結果(ラフプロット)が不規則になった場合は、再計測となります。
こうして2000Ftにおける上昇率曲線が作成できますが、その後基本高度を変更し、さらに測定は風を横から受けるように方向を変えて実施する等かなり時間を要することになります。 また、計測中は燃料の減少とともに上昇率も変化しますが、これは測定後に修正することでデータの均一化を図ります。
次にこれらのデータを基準に、Vx、Vyを算出することになります。
上図のように交点から接線を引くことで、この交点がVxとなり、その曲線のトップがVyとなります。
短距離離陸等では、Vxの速度で離陸を行い、障害物回避後Vy速度に移行することになります。
ちなみに、DA42ではVx、Vyも同速度の82Ktとなっています。
これは、Vx測定結果がVmcと同程度の71Ktになったものと推察され、飛行規程にも「Vxは常にVyより低い、DA42では実際のVxは最低安全速度より低くなってしまう場合があります。
そのため、最良上昇角に対する速度はVyの値となっている。」と記載されあえて公示されていません。
なお、VxとVyの交点は実用上昇限度となるため、性能表を作成するとこの飛行機はどの位の高度まで上昇できるかの目安にもなります。