航空豆知識#190 「速度制限の引き上げ」| アルファーアビエィション

航空豆知識#190 「速度制限の引き上げ」

アルファーアビエィションの飛行機とヘリコプターの飛行教官、整備士がお届けする大好評でためになる航空豆知識。今回は当校の飛行機操縦教官がお届けします。

速度制限の引き上げ

12 月1日から東関東自動車道の一部区間(四街道IC〜成⽥JCT)の最高速度が110km/hに引き上げられました。 新東名の一部区間(御殿場JCT〜浜松いなさJCT)や東北道の一部区間(花巻南―盛岡南)では既に最高速度が120km/h に引き上げられています。 これらは自動車の高性能化、道路の高規格化、交通流、安全性などの様々な要素を検討した結果の速度制限緩和と思われます。

実は航空機の速度制限も2021 年12 月30 日から「一部空域」で引き上げられます。 自動車やバイクなど、道路ではお馴染みの「制限速度」ですが、実は空の上にも「制限速度」があるのをご存じでしょうか?

航空法には次のように書かれています。

(航空交通管制圏等における速度の制限) 第82 条の2 航空機は、左に掲げる空域においては、国土交通省令で定める速度をこえる速度で飛行してはならない。 ただし、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。

一. 航空交通管制圏
二. 第96条第3項第4号に規定する進入管制区のうち航空交通管制圏に接続する部分の国土交通大臣が告示で指定する空域

航空法を受けて、具体的には国土交通省令である航空法施行規則第179 条に速度制限が書かれています。 要約すると次の通りとなります。

航空交通管制圏内の高度900m(3000ft)以下の空域を飛行する航空機はエンジンによって速度制限が課せられ、

ピストンエンジン指示大気速度160kt(約296km/h)
タービンエンジン指示大気速度200kt(約370km/h)

また、航空交通管制圏内の900m(3000ft)を超える空域と進入管制区の3000m(10000ft)以下の空域では エンジンの種類に関係なく指示大気速度250kt(約463km/h)

これらの「速度制限」は、航空機間の衝突回避(速い航空機は避けずらい)と空港周辺の交通の流れを円滑にする(速度が同じな方が管制しやすく円滑に流れる)といった目的で制定されました。 しかし、航空機の性能向上は著しく最新鋭の旅客機には「遅すぎる速度」となってしまいました。 タービンエンジン機の速度制限は一説には当時の最新鋭旅客機ボーイング727(日本では全日空が1964 年に導入、1990 年に最後の機体が日本から退役)の離陸速度を基準にして決めたと言われています。

⼀⽅、国際⺠間航空条約により、航空機は基本的には加盟国間で同じルールで⾶⾏することを求めており、日本ももちろん加盟しています。 このうち、標準と違う部分(その国だけのローカル・ルール)についてはICAO 理事会に対し相違通告するように求めています。

そして、これまで「標準と違う部分」の一つが、これらの速度制限だったのです。 12月30日から、航空交通管制圏内の空域と進入管制区の3000m(10000ft) 以下の空域で、エンジンの種類に関係なくすべての航空機の速度が指示大気速度250kt(約463km/h)に緩和されます。

アルファーアビエィション福島運航所がある福島空港や訓練で使用している山形・庄内・花巻空港などは、いわゆるレディオ空港であり、航空交通情報圏が設定されているため速度制限が元々ありません。 仙台・新潟空港は航空交通管制圏が設定されていますので、今回の法改正の対象となります。また、訓練で使用している単発機C172Pは最大速度が158kt(約293km/h)、ダイヤモンド社製の単発機DA40は178kt(約330km/h)、双発機のDA42は188kt(約348km/h)ですから、今回の速度制限緩和には直接関係はないことになります。

しかし、法令の改正等は実地試験(特に口述試験)でよく質問される重要項目です。このためタイムリーに座学を実施中です。 最後に蛇足?になりますが、航空法154条に罰則規定があり、これらの速度制限に違反すると、罰金50万円がパイロットに課せられます。

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