航空豆知識「水陸両用ヘリコプター」 動画あり!
当校の飛行機とヘリの飛行教官、整備士がお届けする大好評の航空豆知識。
今回は水陸両用ヘリについてヘリコプターの教官がためになる情報をお届けします。
「水陸両用ヘリコプター 運航編」
ヘリコプターには水陸両用のヘリコプターがあります。
ロビンソン社から発売されているR44に、フロート式着陸装置すなわち浮き袋みたいなものをスキッドの着陸装置に装着したものがそれです。見た感じ、いかにも水面に浮くヘリコプターという感じです。
水陸両用のヘリコプターの特徴は、陸上に降りるときは航空法で決められた離着陸の場所、すなわち飛行場やヘリポートに着陸しなければなりませんが、これに対して水上に降りる場合は、日本には水上飛行場や水上ヘリポートがないのでその適用を受けず、極端に言えば、障害物がなく、ある程度の水深があり、他人に迷惑をかけなければ、海上、水上のどこにでも着陸することができます。
水上に着陸後、地上への移動は飛行ではなく、地上移動になります。
ただし、その地上に降りる場合は、その場所の許可を受けていなければなりません。勝手に人の土地に着陸することはできません。
とは言いつつも日本のように海や川、湖の多いところでは、とても魅力的です。
水上機が海上や水上に着陸した場合は、船として扱われ、海上衝突防止法の適用を受けます。
ただし船とは同等ではなく、水上航空機はできる限りすべての船舶から十分に遠ざかり、かつ、これらの船舶の通行を妨げないようにしなければならないと定められています。
「水陸両用ヘリコプター 操縦編」
さて、実際に運航して水上に着陸する場合、どのようなことに注意するのでしょうか。
着陸するときにヘリコプターは風に正対して着陸します。
その風の判定ですが、海では白波が崩れて流れていく方から風が吹いています。白い泡が流れるので流れている方向に風が吹いていると思いがちですが、実際はその逆なのです。川や湖の場合は、波が風によって流れていく感じです。
次に、着陸する際に水面が穏やかな場合は、水面までの高度が判定しにくくなります。
鏡のように澄み切った水上に着陸する場合は特に注意が必要で、ゆっくり水面に近づくように着陸しなければ高度判定ができず水面に激突してしまいます。水面に近づくと波が立ち始めるのでそれで高度判定をします。
着陸後の水上でのホバリングですが、ヘリコプターのローターが作る吹き下ろしの風により水面に波ができ、それが動くので、自分が動いていると錯覚して一点に止まることがとても難しいです。慣れてくると吹き下ろしの風によってできた波をヘリを中心に綺麗な円を作るようにすれば概ね止まることができます。
最後に水上でエンジンを止めるとどうなるでしょうか。
エンジンを停止した直後は何も起きませんが、テールローターの回転がなくなってくると左に回り始めます。ローターを止めようとブレーキをかけるとさらに左に向いてしまいます。360度回るときもあります。
その逆にエンジンをかけてローターが回り出すと、今度は右に回り始めます。ですからエンジンを回してローターが回り出すときは左のラダーペダルをしっかり踏んでおきます。
海上への着陸は推奨されていませんが、着陸しなければならない場合は、白波が立っていない場所に着陸します。白波があると波高が30cm以上となっていて、着陸するとその波で横転してしまいます。
いろいろ注意点はありますが、これらのことに注意すればとても楽しく、便利なヘリコプターです。空、海、陸を踏破したすばらしいヘリコプターです。