航空豆知識「夏の飛行の注意点」
飛行機とヘリコプターの教官、整備士がお届けする大好評の航空豆知識。
今回は飛行機の教官からのためになる情報です。
「夏の飛行の注意事項:VFRでの航法」
「雷三日」
夏季において雷が発生するような天気は三日間くらい連続しておこることが多いため使われる言葉です。
夏型の気圧配置は比較的安定していて熱雷を発生させるような条件はすぐには変わらないことと、上空の寒気の移動が遅く通過するまでに三日間くらいかかることが多いためです。
暑い日の午後になるとみるみるうちに発達し強い風雨をもたらす積乱雲、今回は飛行の大敵、VFR(有視界飛行方式)での雷雲域飛行法をお教えします。
冬の雷雲は背が低く他の雲と区別がつきにくいのが難点ですが、夏の雷雲は背が高く比較的他の雲との判別が容易です。
小型機でこの雷雲域を飛行しなければならないときにはどうすればいいのか?
「風上側に避ける」が正解です。
積乱雲は非常に背が高く小型機がその上を飛び越えることは不可能です。
反対に積乱雲の下は強い雨や下降気流、時には雹や竜巻などがあり非常に危険です。
VFR航法訓練などでどうしても雷雲域を飛行しなければならない場合は、予定コースを雷雲の風上側に5マイル(約9キロメートル)以上離して飛行します。
風下側の特に「かなとこ雲」の下は向こう側がよく見えても飛行してはいけません。
猛烈な乱気流や雹に遭遇する危険性が高いためです。
また雷雲域が線上に広がり、ところどころ開いているように見えるときは特に注意が必要です。
運良く積乱雲の間を通過できたとしても、その向こう側に更なる積乱雲が待ち構えているかもしれなく、そのような時には今通ってきた積乱雲の間の隙間はなくなっていることがほとんどです。
俗にいう「積乱雲に囲まれた」という事象で、こうならないように操縦士は注意します。
このような時は積乱雲の間を飛行することを諦めて引き返す勇気も必要です。
夏のVFR飛行においては、TAFなどで飛行ルート付近の飛行場に雷雲の発生予報が出ていないかを確認します。
そしてルート変更や空港周辺での待機、万が一のダイバートのための燃料などの計画を腹案に持つことが重要です。
午前中や午後の早い時間帯にフライトを終了するよう計画することも考慮します。