航空豆知識#205 TCAS の仕組み
アルファーアビエィションの飛行機とヘリコプターの飛行教官、整備士がお届けする大好評でためになる航空豆知識。今回は引き続き当校の飛行機操縦教官がお届けします。
TCAS の仕組み
TCAS は、TCAS を装備した航空機が、定められた範囲内にいる全ての航空機に対して1,030 メガヘルツの周波数で質問波を送り、周辺にいる航空機はその質問波に対し、トランスポンダーにより1,090 メガヘルツで応答します。この質問波と応答波の繰り返しは毎秒数回行われます。
このように継続的な往復通信を通して、TCAS システムは周辺に存在する航空機の相対位置や高度・速度を組み込んだ三次元の地図を作り、そして自機の位置のデータから将来の位置を推定することによって、潜在的な衝突のおそれがあるかどうかを判断しパイロットに警告を表示します。
TCAS には、TCAS Ⅰ,TCAS Ⅱ,TCAS Ⅲ,のバージョンがあり、通常の一般航空の小型機に装備されているのは、TCAS Ⅰが主流になっています。このTCAS Ⅰシステムは、航空機の周囲の約8km 位までの交通状況を監視して、感知した航空機の大まかな位置と高度に関する情報を提供します。そして、さらに「接近情報」(TA:トラフィック・アドバイザリー)として音声を伴って警報を発します。しかし、TCAS Ⅰではパイロットへの警告は発しますが、回避の方法までは指示しません。あくまでも、回避の方法についてはパイロットの判断によります。TCAS Ⅱ以上になると「回避指示」(RA:リゾルーション・アドバイザリー)も出ます。