航空豆知識「飛行機の重心位置計算」その1
当校の飛行機とヘリコプターの飛行教官、整備士がお届けする大好評の航空豆知識。
以前に「飛行機の重量計算」シリーズをお届けしましたが、今回から「飛行機の重心位置計算」について飛行機の教官がためになる情報をシリーズでお届けします。
飛行機の重心位置計算(その1) 計算の歴史
今回は重心位置計算の簡単な歴史から入ります。
重量の計算とともに重心位置の計算は飛行機の出現と同時にあったと言えますが、経済的な運航という意味を含めて本格的にかつ組織的で、しかも簡易な計算方式として、現在も用いられているような考え方が唱えられるようになったのは第2次世界大戦後のことと言われています。
戦時中には、航空部隊から偵察、輸送、爆撃、戦闘などの任務に出発する際に、「重量及び重心位置計算」の必要性が考えられました。
そして次々と現れる新型や新性能の、より複雑化していく飛行機について、より迅速にしかも正確に「重量及び重心位置計算」を行うために、より組織的な、より簡便な計算方式が必要となってきました。
そこで航空部隊としては、飛行機の制作者側に対して、各タイプの飛行機についての性能や重量などのいろいろな条件の下でのデータを作成して提出するように要請しました。
そして、これらのデータをもとにして、それまでにこの計算方法に若干の知識や経験を持っていた民間の商業航空出身の運航担当者たちが、かつての研究と体験を持ち寄って標準的な計算方式を確立したと言われています。
戦争が終わり民間の航空会社に復帰していった人たちは、戦争中に航空部隊の中で標準化されていた「重量及び重心位置計算」の方式を民間航空に持ち帰り、さらに各会社で研究が行われ、それぞれの自分の会社の運航に適合するように改良されて、現在に至っています。
飛行機の「重量及び重心位置計算」を行う際に、必要な値を加えたり減らしたりする計算の方法と重心位置の動きの両者をグラフ化して見やすくする方式は、1961年頃から各航空会社で検討されて実用に用いられるようになりました。(その2に続く)
次回は「重心」について解説します。お楽しみに。