整備士がお教えする「給油時の注意」| アルファーアビエィション

整備士がお教えする「給油時の注意」

大好評、アルファーアビエィションの教官陣、整備陣がお届けする航空機の豆知識です。
今回はヘリコプター整備士が給油についてお教えします。しっかり勉強してください。

給油時の注意と対策
寒く乾燥するこの時期、給油時にもっとも注意すべきものは「静電気」です。

湿度の高い夏などは、湿気を通して静電気が逃げていくので人体に帯電していくことはありません。(湿度が約75%以上だと静電気は逃げ、帯電しないといいます。)
その逆に、乾燥している冬は一年を通してもっとも静電気が発生しやすく帯電する時期です。
ドアノブなどに触ると「バチッ」と痛く不快な思いをされる方が多いと思います。
これは人体に帯電された静電気が外へ逃げようとする働きがあるため、電気を通しやすい物質(金属等)に触る際、静電気火花(スパーク)が発生します。
昼は見えにくくても、暗いところでは実際に火花が飛ぶのが見えます。

セルフのガソリンスタンドでは「静電気除去シートに必ず触ってから給油してください。」とアナウンスされてますが、これはスタンド内に気化したガソリンが充満しているので、スパークをした瞬間、爆発を起こす恐れがあるためです。
静電気除去シートは人体に帯電した静電気を抵抗の加減をしながら(一気に放電すると金属を触った時のようにスパークするため)地上へと静電気を逃がす仕組みになっています。

給油時の静電気は大事故に繋がる危険性があります。
そこで、給油時の静電気発生と蓄積防止策をご紹介します。

①給油ノズルのレバーは全開にしない。
液体が流動する時に発生する流体摩擦は、流速が大きいほど大きくなり静電気が帯電しやすくなります。
なるべく流速を小さく、流れを乱さず、振動を抑えることが大切です。

②ナイロン等、合成繊維の服は避ける。
合成繊維が静電気を起こしやすいのは有名ですが、それに加え冬は防寒の重ね着をするので、衣類と衣類が摩擦を起こし静電気が発生し帯電していきます。
ポリエステルでできているフリースも静電気が起きやすい素材です。
なるべく給油時は綿、絹、麻等の静電気を発生しづらい天然繊維の衣類がお勧めです。
アルファーアビエィションの整備課では天然繊維でできた防寒着を着て給油作業を行っています。

③燃料をこぼさないようにする。
液体の状態より、こぼれて気化した方が引火しやすいため注意が必要です。
エンジンカットした後の機体への給油では、エンジン付近が高温になっているため地面にこぼし気化すると危険です。気をつけて給油することが大切です。

④アース(地面などに帯電を逃がす)をしっかりとる。
給油時は①で述べたように流速を小さくしていくことで流体摩擦も小さくすることができますが帯電はしていきます。
しかしアースをとることで帯電せずに地面へと放電していくので安全に給油ができます。
当社でもアース線はテスターを用いて導通確認や抵抗値を測るなど、日々点検を行っています。
アース線は抵抗値が低いものがよいです。これは一気に放電するとスパークする恐れがあるためです。
ヘリコプターや飛行機へ給油するときは「必ずアースをとる!」 これはとても大事です!!
自動車に給油するときも静電気除去シートに触り、給油ノズルを給油口に触れて給油します。

②については合成繊維の衣類がとても多いので、給油時だけ天然繊維の衣類へ着替えるのは大変だと思います。
①、③、④を行うと安全性が格段に高まるので、覚えておいてぜひ実施してください。
以上、給油時の注意と対策をお届けしました。

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