1999年秋 斎藤静のアメリカ滞在記
10月9日-11日 アリゾナ
みなさんお元気ですか?やっと秋らしい季節になりました。 飛行するにはとても楽しい季節です。10月9日から11日までアリゾナ州でグライダーで飛んできました。
ずいぶん昔に当社でおなじみの元ノースウエストのキャプテン、アート・ブラウンにグライダーの訓練をうけ事業用まで取得したのですが、日本ではもっぱらヘリコプター、飛行機で飛んでおりますので、グライダーは海外に出かけたときに必ずグライダー場を訪ねて飛ぶようにしているのです。
イギリス、ドイツ、カナダ、ニュージーランド、アメリカ等でグライダーでのフライトを楽しみました。
今回は、ほんと久しぶりにアリゾナで皆様お馴染みの当社チーフパイ ロット青ちゃんとフライトしました。青ちゃんは、不思議なことにグライダーの免許を取り忘れておりま して、今回異例の1日特訓で翌日見事にグライダーの免許を取得した超特急免許取得者なのです。その彼の腕前を披露してもらった訳です。
しかし、アリゾナは、暑かった。あたり一面茶色の色彩とまぶしすぎる太陽と抜けるような青空。しかし、サーマルは無く、やっとつかんだサーマルが一瞬に下降気流に消えていく。
結局滞空時間は短く、TGLになってしまいました。その点夏のドイ ツは、楽しかった。緑と白い雲、青い空、ライン川、古い城下町、飛んでいてもロマンチックでした。
私たちのようにエンジンのお世話になっているパイロットは、たまにはグライダーで飛ぶのも勉強になりますね。
10月12日-16日 カリフォルニア
ロビンソン社で開かれたセーフティコースに出席しました。 私たちは、以前にもこのコースに参加しておりますのでコースの前日にフライトをさせてもらいました。それもR44のハイドロ装備付きの新機です。しかもポップアップフロートも装備されていました。
わくわくしながらテストパイロットのロッドさんとフライト。じゃあそろそろと言いながらLow RPMのRecoveryをどうする? Settling with power は、どんな状況でおきる?Recoveryどうする? Normal approach. Straight-in Auto rotation with power recovery. 180 with power recovery. Hovering Auto rotation. など一通り行い、今度は Power recovery 無しで各種 Auto rotation を行いました。最後に Hydraulic Failure の操作を行いました。
すごく楽しくて1時間30分もあっという間に過ぎてしまいました。R44のハイドロ装備付きの新機でのフライトの感想ですが、とにかく操縦がしやすかった。振動もなく、コレクティブ、サイクリックもソフトタッチで操縦でき快適です。難を言えば Hydraulic Failure の時350より操縦が重いのがちょっと困りますね。でもコツをつかめば大丈夫でしょう。しかし巡航速度は単発タービン機と同じですし、部品も安いし扱いも簡単ですから、この機体はヒットしますよ。
もうイギリスやアリゾナのお友達は、飛んでますよ。彼らが私に電話で「あの機体はいいよ!」とお勧めだったのです。
私、はじめ半信半疑だったのです。実は・・・。
でも、良かった!本当みなさんにお勧めです。
フライトのあとロビンソン社長にお会いしてフライトの感想を伝えたら喜んでました。ロビンソン社長は、とても素敵な方なのですよ。皆さん、彼がR22を製造してくれたからこんなに手軽にヘリコプター の訓練が民間人の間で盛んになったのですよ。それも世界中で。そもそもアメリカでさえヘリコプターの訓練は民間人の間で高嶺の花だったのですから。
日本も同様です。このお話は、とっても長くなるのでまたの機会にします。
さて、13日から15日までの講習会の内容に移ります。簡単に箇条書きで報告します。4日間を全て報告するにはあまりに画面が足りません。また、安全講習会を開催しますので参加して下さい。その時に詳 しく説明致します。
- ロビンソン社長の講義
- 参加者の自己紹介
- Accident Review
- Helicopter Theory
- Critical Flight Condition
- R22 Flight Manual
- Private Flight Maneuver
- Regulation
- R22 Systems
- Preflight Inspection
- Special FAR
- Course Review
- Final Written Examination
ロビンソン社長の講義は、今までロビンソン社が発信している Safety Notice の内容と事故の検証でした。大まかには、
- 150時間以下のパイロットの事故が多い。
- 150時間から300時間のパイロットは自分でも色々なことを試したがるので事故につながりやすい。
- 経験のあるパイロットは、デモフライトで、はりきりすぎて事故を起こす。
- 写真撮影の仕事は、少なくとも500時間以上経験をつんでから始めてほしい。
- ガバナーを装備した結果事故の防止につながっている。
後の講義は、パイロットのティムさん。整備士のパットさんで行われました。ティムさんの講義は、Accident Review の説明とSFARの内容 Flight training での注意、Flight Manualの説明でした。
印象に残ったのは、Flight Manual の説明でどうしてこの数値にしたのか等の苦労話でパイロットと設計者、エンジニアのやりとりなど「そうなんだ、こんな理由でこの制限スピードが決まったんだ。」なんて思い出して笑えちゃう内容もありました。
それから、パットさんの案内で工場の各部署を見学しました。私が1984年にロビンソン社を訪ねた時は、まだ小さな町工場で少人数、ほとんど手作りに近かったのでびっくりした記憶があります。でも1982年にセスナ社の工場に行ったときも同じでした。車の工場のイメージで小型機工場を訪問するとちょっと意外な感じがするかもしれません。しかし、あれから何回か訪れる度に工場が大きくなり人数も増え、今は、製造ラインが Robinson R22, R44と通路を挟んで並行になっていて、手順よく作業が進められ製造日数も短縮され、品質管理も向上して目を見張ります。
皆さんを一度工場にお連れしたいと思います。とても参考になります。パットさんの講義は、ヘリの整備、取り扱いについてでした。実際に壊れた部品、不具合の発生した部品を見ながら説明を受けましたのでとても参考になりました。整備もまともにせずに飛んでいた某国のヘリのブレードを見たのですが、スポンジのように小さい穴があいていてビックリしました。
その他には、ロビンソン社の正式な部品では無い部品を安く購入して、それが原因で事故になった人がいたとのことです。意外と整備をきちんとしないで飛行している人がいるのです。でもご自分のためには、きちんとした整備は最低限必要ですね。
最終日は、ティムさんから SFAR の説明があり、その後は今までの復習を兼ねたテストが行われ、お昼に終了しました。
R22製造3000機達成記念パーティ
10月15日の午後4時30分から工場でR22の3000機製造達成を記念してパーティが行われました。製造番号3000を購入したのはイギリスのディーラーで3001機目を購入したのは、私どもアルファー アビエイション。ロビンソン社長から素敵なメッセージをいただき、トーレンス市長他900人以上の方が出席し、盛大に執り行われました。
ロビンソン社長が急に私に「皆さんに君からも挨拶を」と言われ、ロビンソン社長と初めてお会いしたときのこと、私が初めてR22を購入したときに社長と飛んだ事などをまじえ、今回の記念すべき機体の購入に際してパーティを催して下さったお礼をのべました。
パーティの時、大勢の社員の方々がそれぞれ私のところに来てドイツで開催されたヘリコプター選手権での私たちの活躍をとても喜んでくれました。また、「キャビンは、僕たちが製造したんだよ」「俺達は、操縦系統の部分だよ」と自慢げに教えてくれたのがとっても嬉しかった。みんなプライドをもってR22の製造に携わっていることがわかり安心しました。
社長をはじめすばらしい人たちと交流が出来てとても嬉しいです。これからもロビンソン社は、飛躍していくことでしょう。
旅の最後に
講習会でもイギリス、ドイツ、スイス、オーストリアの人たちとお友達になりました。皆日本で働きたいと言うので「日本語勉強してね。」とお勧めしておきました。そのうち世界中のパイロットが当社で働くようになったらおもしろいね。
色々な事を書きましたがまだまだ書き足りません。ロビンソン社での安全講習会の詳細は、アルファーで講習会を開催しますので参加して下さい。 参加して下さる方には、前回同様楽しいおみやげがありますよ。今は内緒です。
それではみなさん楽しい未来に向かって元気にお過ごし下さい。