気象衛星の画像でみる 平成12年9月11-12日の「東海豪雨」
気象概況
9月11日から12日にかけて、本州上に前線が停滞していた。一方、大型で非常に強い勢力の台風第14号が日本の南に会ってゆっくりした速度で沖縄方面に進んでいた。
この前線に向かって、台風の影響で非常に暖かく湿った空気が断続的に流入したため、ほぼ同じ地域で長い時間にわたって積乱雲が発生・発達した。この結果、愛知県、三重県、岐阜県など東海地方を中心に記録的な大雨となった。
名古屋市千種区にある名古屋地方気象台では、24時間で500ミリを超える雨が降った。これまでの観測値の約2倍の雨が降った。
雨は一様に降り続いていたわけではなく、強弱のくりかえしがあったことがわかる。
雨量分布を解析してみると、名古屋市はほぼ500ミリ以上の範囲に含まれる。どうしてそんな雨が降りったのだろうか?気象衛星の画像をみて、わかることをいくつかあげよう。
雲の動きから わかること。
気象衛星の画像を見ながら、次のようなことに注目してみてください。なお、着色は次のバーのような色分けでつけてあります。
→衛星画像へGO!
1 「秋雨前線」より北の雲は西から東へ移動している。秋雨前線は、西風が吹いている領域の南限である。
気候的には、秋雨の季節は、夏から秋への移ろいである。それを地球規模でみると、日本付近では太平洋高気圧に覆われていた夏の範囲が次第に後退して、「西から東へ天気が変わる」偏西風に支配される範囲がしだいに南下していくことを示す。
「秋雨前線」はその先端部分を示している。動画あるいは、ご自身でページめくりをしながら、秋雨前線より北の範囲の雲の動きを確認されたい。
2 台風の存在
台風をとりまいて、発達した雲域がまとまっている。画像は赤外線画像で、白いところは低温すなわち高高度まで雲が発達している様子がよくわかる。中心に眼(雲の少ない部分がある)。眼の周辺部分の雲は密集して大変発達している。周辺の雲は、台風に回り込むような動きをしている。雲の動きを追跡してみると、大まかにみて、中心に回りこむ雲の動きが見える。
3 台風から離れた雲の存在
台風の東側の東経140度線付近には、南よりの風に乗って、北へ流される雲域が見られる。気圧の解析や、まばらに存在する島や船の気象観測だけでは、見逃されることがある。気象衛星による観測で、広い範囲の雲の分布が把握できる。
画像を進めたり戻したり、着色画像なども参考にすると、南海上から線状の雲域が前線付近に到達している様子が見える。 前線は、寒気と暖気の境目で、地上に接している部分を言う。 前線に達した暖気は、寒気の上を這い上がる。十分に湿った空気は、わずかな上昇だけでも凝結を始め、凝結熱が発生することからますます不安定となる。雲は発達して、強い雨を降らす。
雲の発達の程度を色分け画像で確認すると、台風と同程度の雲頂温度となっていることがわかる。
4 なぜ同じところに雨域がとどまったか
・線状の雲に表されるような、湿った空気の供給が続いた。
・台風や前線の位置が大きく変わらなかった。
5 なぜ顕在化したか
・11日夜にかけて、大陸から気圧の谷が接近してきて、前線が強まる状況であった。