新春対談 2008年のパイロット需要を探る
新春対談
2008年のパイロット需要を探る。ねらいは「公務員パイロット」か。
参加者
航空キャリアアドバイザー 齋藤健司
航空業界就職仲介人 T氏
T氏:
あけましておめでとうございます。
今年は石油価格の100ドルという声を元旦早々に聞く波乱含みの年明けとなっています。この社会環境で、はたして航空業界に就職することは可能かと言うことも含めてお話をしていきたいと思います。
齋藤:
あけましておめでとうございます。
原油が100ドルということに関しては、お金の流れがどうなってきているのかということを考えて、航空業界への影響を分析しますと、決してマイナスではないと思われます。これはBRICSの国の経済成長により発生したもので、国際的には外人パイロットの需給の逼迫という形であらわれてきております。新興国から産油国に石油代金として、お金が流れる。そのお金が産油国の政府系ファンドなどを通して新興国のエアラインに投資される。新興国のエアラインは手っ取り早い外人パイロットを雇用する。という流れです。また日本のエアラインでは燃費効率の良い737NGなどへのダウンサイジングも進みますますパイロット不足になってきています。
T氏:
悲観的なシナリオなど無いのですか?
齋藤:
グローバル化のなかで、技術者は不足し続けているわけで、有能なパイロットになれる要素がある人なら心配はない。それにヘリコプター・パイロットにとっても石油高は需要の拡大を意味することです。オフショアと言われる海底油田のリグへの交通はヘリコプターに限られていて採算に乗らなかった場所も石油高で開発され始めています。ここでヘリコプターの需要は一気に拡大しています。
T氏:
今日のテーマである公務員パイロットの需要はどうですか?
齋藤:
国内の一番大きな公務員パイロット需要先は47都道府県に配備されている警察航空隊です。歴史的に自衛隊からパイロットの割愛を受けて編成された警察航空隊なのですが、ここ数年がパイロットの退職時期にかかるわけです。また双発機に更新されていることもデュアル・パイロットで運用されるようになり一層のパイロットの必要が出てきています。次に消防と海上保安庁ですが、海上保安庁は毎年6名程度を募集しています。消防についても、団塊の世代の退職時期にかかってきていますので求人は増えています。
T氏:
どのような方法で取得すればよいのでしょか?
齋藤:
私は多数の公務員パイロットから聞きましたが、「基本が大切、一度悪癖に染まると一生抜けられない」ということが一番だと。やはり最初から良い先生(指導者)により基本をしっかりと身につけるのが良いでしょう。ということになると日本で一から着実に勉強するのが早道かなと思います。
T氏:
アメリカやカナダでインストラクターをやっても無駄ですか。
齋藤:
ほぼ無意味です。(笑) それはそれでビザの問題や生活費、そしてインストラクターを取得することの困難さなどで大変なのですけど。インストラクターをやっていたというキャリアは日本では認められないし、事業用操縦士を取得するのにもプラスになるかなという程度です。一度付いた悪癖がよりひどくなって染みついている人も多いですね。
T氏:
海外で免許取得した方が安いと言っている「留学斡旋業者」もいますが?
齋藤:
日本で欧米ブランド商品を購入した方が安くなっているのと同じで、「操縦技量」の向上効率を考えると、同じ100時間飛行しても逆に日本の方が安くなっています。
T氏:
公務員パイロットになる秘訣をここでまとめてくれますか。
齋藤:
高校や大学でまじめに勉強する。そして国内で一から基本を確実に教えてもらう。短い時間で事業用操縦士まで取得する。特別なことは何もありません。外国でプラプラして出所不明のインストラクターに教えてもらってもうまくいかないなんて、誰が考えても常識じゃありませんか。
T氏:
それもそうですね。訓練費をかけて公務員パイロットになって元は取れますか。
齋藤:
生涯賃金の差額を考えると元は取れると思いますし、仕事のやりがいと言う点でも充実した人生が送れると思います。また手に職を持って、自らの雇用流動性を高めることもできます。
T氏:
今年の展開が楽しみですね。