齋藤 静、FAI エア・スポーツ・メダルを受賞
●オットー・リリエンタール
オットー・リリエンタールは、1848年、旧東ドイツのメクレンブルクフォアポンメルン州のアンクラムに生まれました。 飛行機の開発ではライト兄弟がよく知られていますが、リリエンタールはライト兄弟に先駆けて飛行機で空を飛んだ人です。飛行機というよりハンググライダーのイメージに近いものですが、その独自の装置で飛行に成功したのは1891年でした。
ライト兄弟と同じように、リリエンタールも一つ違いの弟、グスタフと二人で鳥の飛び方の研究に取り組みました。 本格的になったのは、プロシアとフランスの戦争(1870-71年)に従軍したのちでした。 当時、ポツダム近郊に住んでいたリリエンタールは自宅の前に高さ15メートルほどの人工の丘をつくり、グライダーの試作をしては駆けおりてみましたが、はじめのうちは失敗続き。しかし、試行錯誤をしているうちに、平面 的な翼より緩やかに弧を描いた曲面の翼の方が空気抵抗が少なく、より重いものを浮かび上がらせる揚力が強いことを発見しました。これも、鳥をじっくり観察した成果でした。
第1号の試作機をつくってから15年目の1891年の夏。リリエンタールはついに子どもの頃からの夢を実現させます。翼の面 積が約10平方メートル、柳の枝を骨組みに使い、メーベ(カモメ)と名づけたグライダーに乗ったリリエンタールは、丘を駆けおりるとフワリと空に浮かび上がりました。飛んだ距離は80メートル。ちなみにその12年後、初めてエンジンつきプロペラ機で空を飛んだライト兄弟の記録は36メートルでした。